カスタマーサクセスとインサイドセールスの違いとは?定義や役割・成功のコツを解説

組織の営業活動を効率化し、優れた顧客体験を提供する手段として「カスタマーサクセス」や「インサイドセールス」を取り入れる企業が増加しています。

一方で、比較的歴史の浅い概念なので「どのような違いがあるのかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、カスタマーサクセスとインサイドセールスの定義や目的、業務内容などを両者の違いにフォーカスして解説します。

効果を最大化させるコツについてもあわせて紹介するため、ぜひ参考にしてください。

目次

カスタマーサクセスとインサイドセールスは「The model」で定義されている営業プロセスの一部分です。

「The model」とは、セールスフォース・ドットコムの創業者であるマーク・ベニオフ氏が2019年に提唱した概念です。営業プロセスを以下の4つに分け、営業効率を高めることを目的としています。

マーケティング見込み客の創出・獲得
インサイドセールス見込み客の育成・案件化
フィールドセールス案件の契約・受注
カスタマーサクセス既存顧客の追加購入・サービス継続の促進

従来の営業スタイルでは、上記のフローを営業担当者一人で担うのが一般的でした。

しかし、現代は市場が成熟して製品・サービスのコモディティ化が進んでいると同時に、消費者の情報収集手段が多様化しています。これまでの方法を踏襲するだけでは、到底顧客のニーズに応えきれなくなっているのです。

そこで、The model型の分業スタイルを導入し、優れた顧客体験を提供する基盤を整える企業が増加しました。カスタマーサクセスとインサイドセールスは、時代の変化に対応するうえで登場した「新しい営業スタイル」だといえます。

以下では、カスタマーサクセスとインサイドセールスそれぞれの定義を掘り下げて解説します。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、既存顧客を能動的に支援することで、製品・サービスを継続的に利用してもらうよう促す手法・部門のことです。顧客の成功体験を実現するためのサポートを「先回りして」行う点が、顧客からの問い合わせへ受動的に対応するカスタマーサポートとは異なります。

カスタマーサクセスは、顧客の購買履歴や行動データなどを分析しつつ、それぞれに最適な支援を提供する部門です。具体的には、ウェビナーの開催やユーザーコミュニティの運営、製品・サービスの導入サポートなどを行います。

インサイドセールスとは

インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議ツールなどを利用した、非対面の営業活動を行う手法・部門のことです。

見込み客の購買意欲を醸成し、商談の機会を創出したうえでフィールドセールス(外勤営業)に引き継ぐ役割を担うことが一般的ですが、案件の創出から受注までを一貫して担う場合もあります。

フィールドセールスは、外回りで見込み客と商談し、製品・サービスの成約につなげます。そのため、受注確度の低い(購買意欲の育っていない)見込み客を訪問していては営業効率が下がってしまうのです。

そこで、インサイドセールスが見込み客の受注確度を高める活動を行うことで、フィールドセールスは成約の可能性が高い見込み客へリソースを集中できるようになります。

カスタマーサクセスとインサイドセールスは共に営業活動の一部を担う部門ですが、目的や業務内容などはそれぞれ異なります。以下では、両者の主要な相違点を解説します。

目的・ターゲット

カスタマーサクセスの目的は、顧客が自社に対してもたらすトータルの利益(LTV)を最大化することです。長期的な関係性構築を目指し、「既存顧客」を対象としてサポートを行います。

インサイドセールスの目的は、見込み客を育成することで商談の増加・成約率の向上を図ることです。「見込み客」の購買プロセス(認知・興味・比較検討)に応じた適切なアプローチを行い、成約確度を高める役割を担います。

業務内容

カスタマーサクセスとインサイドセールスの業務内容の違いは以下のとおりです。

業務内容詳細
カスタマーサクセスヒアリング既存顧客の課題や不満を可視化する
オンボーディング商材の導入をサポートする
ヘルススコアチェック顧客の利用状況を確認する
アップセル高額な商材への乗り換えを提案する
クロスセル契約中の商材に加えて新たな商材を提案する
インサイドセールスヒアリング見込み客の情報を収集する
リードナーチャリング見込み客へ情報を提供し、購買意欲を醸成する
リードクオリフィケーションフィールドセールスにパスする見込み客を選別する

カスタマーサクセスは、あくまで「顧客の成功」にフォーカスした支援を行うことが特徴です。顧客が商材を有効活用できるようなサポートを行うことはもちろん、顧客の成果を最大化させるうえで他の商材や高価なプランが必要な場合は、アップセル・クロスセルの提案を行います。

インサイドセールスは、見込み客が求めていることや解決したいことを顕在化させるために、情報収集(ヒアリング)を行います。そのうえで、見込み客のニーズに合致した情報を非対面の手法を用いて提供し、徐々に購買意欲を育てていくのです。

KPI

カスタマーサクセスとインサイドセールスでは、行動の評価指標(KPI)も異なります。

KPI詳細
カスタマーサクセスLTV顧客1人が自社にもたらす総利益
解約率(チャーンレート)顧客が契約中のサービスを解約した割合
アップセル・クロスセル率アップセル・クロスセルが成功した顧客の割合
顧客ロイヤリティ顧客が自社持つ「愛着」や「信頼」の度合い
オンボーディング完了率導入支援を完了した顧客の割合
インサイドセールスコンタクト数・コンタクト率見込み客にコンタクトできた数・割合
メール開封率メールが開封された割合
商談数・商談化率見込み客を商談化できた数・割合

カスタマーサクセスにおいては、「顧客との関係性構築」や「顧客の信頼獲得」の度合いを中心に評価するのに対し、インサイドセールスは「商談数の最大化」に紐づいた指標を重視します。

カスタマーサクセスとインサイドセールスを含むThe model型営業プロセスは、形式を導入するだけではうまく機能しません。以下では、カスタマーサクセスとインサイドセールスを組織全体の成果につなげるポイントを紹介します。

部門間の協働体制を構築する

The model型の分業スタイルで成果を上げるうえでは、部門間の連携強化が欠かせません。営業活動に関する情報を組織内で適切に共有できなければ、見込み客の取りこぼしや成約効率の低下、解約率の上昇などにつながるおそれがあるためです。

上図のように、各部門で収集した情報を的確にパスできる体制を整えなければなりません。部門の垣根を越えた協働体制の構築が、カスタマーサクセスとインサイドセールスの導入を成功させる必須条件になります。

データを最大限に活用する

The model型ビジネスモデルの最終目標は、顧客の満足度を高め、関係性を長期的に継続させることです。そこで、顧客データの収集・分析による「真の顧客ニーズ」の把握が重要になります。

部門をまたいで情報を一元管理できる、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)といったITツールを活用し、データの活用基盤を整えましょう。その結果、顧客のニーズにマッチしたアプローチを一気通貫して行うことが可能になります。

顧客データが十分に活用できれば、「どの顧客に」「どの程度の」アプローチ・フォローを行うべきかが明確化するため、組織のリソース配分が最適化するというメリットもあります。

一連の営業活動において、カスタマーサクセスとインサイドセールスは切っても切れない関係にあります。組織の生産性を向上させるうえでは、両者を含む各部門の連携強化が不可欠です。

情報の共有・活用基盤を整えることで、カスタマーサクセスとインサイドセールスの協働体制が構築しやすくなります。まずは、CRMをはじめとするITツールを活用し、顧客データを一元管理することから始めましょう。

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